トマトの味


プランターで栽培していたプチトマト、今朝ようやく真っ赤に色づいて今年の初物。🍅

「甘酸っぱくて、ウンマカーッ!(おいしい!)」  自分で作った作物の味は格別でございます。

さてトマトが実る季節になると、ちっと(ちょっと)ほろ苦い思い出が…。
それは、そろそろ戦争が終わろうとしていた頃のお話です。

私こと婆ダムA子は、カゴッマ市内に住んでいましたが
空襲が激しくなって、姶良(あいら)郡の重富(しげとみ) という地に疎開しました。

物資は尽きて、食べ物も手に入らないご時世。
疎開先のナカ婆のお宅は農家で、乏しいながらも食べ物はあったのですが
十余人の子どもがお世話になっていましたので、ひとりが頂ける量は少なく
相変わらずひもじい思いをしておりました。

初夏になって…
ナカ婆の畑には、真っ赤に熟したトマトがたわわに実りました。
私は農家のお手伝いをしながら、トマトを横目に流れる唾を抑えることができません。

ある日、とうとう我慢ができなくなって
疎開仲間を引き連れて、トマトを食べに畑へと向かいました。

そして…畑でトマトを食べる🍅!食べる🍅!食べる🍅!

顔中がトマト汁だらけで、服もベトベト…でもそんなことは、お構いありません。

仲間「トマト、ウンマカネェーーーッ!」     訳:トマト、おいしいねーーーッ!

A子 「アア! ウンマカァーーーーー!」           訳:ああ、おいしいーーーッ!

仲間「ジャッドン、コゲン食ベッガラレンカネー?」      訳:でもこんなに食べて叱られないかなぁ?

A子 「 ウンニャ!畑デ食ベテン ドロボィナ  ナラン」     訳:いいや!畑で食べても泥棒にはならない。

当時、誰が言い出したのか
 畑の作物は持ち帰ったら泥棒だが、畑で食べるなら許される』
 …という暗黙の決まりがありました。

久しぶりにお腹いっぱい食べて、ごきげんで帰ると
ナカ婆が近所のオバサンと、なにやらおしゃべりしています。
そして私たちを見るなり、オバサンが叫びました。

「アン子タッジャッド! 畑デ トマトヲ食べチョッタトハ!」
  訳:あの子たちだわ! 畑でトマトを食べていたのは!

するとナカ婆は私たちをマジマジと見て 「ホンノコッネッ…」   訳:ほんとに…?

うなだれて頷く私たちでしたが、ナカ婆はそれ以上、何も言いませんでした。

仲間「ナイゴテ ナカバアハ ガランカッタトジャロカイネ?」 訳:どうして ナカ婆は、叱らなかったんだろうね?

A子 「ソリャ アノ決マイヲ シッチョッタカラヨ」      訳:それは あの決まりを知ってたからだよ。

その後も私たちは、たびたび畑でごちそうになり、ほどなくして終戦を迎え、疎開先を引き揚げました。


そして再び学校へ通い出した頃、先生からこんな訓告が…。
「畑で作物を食べても泥棒にならんといってる奴がいるそうやが立派なドロボーじゃ!

ガーーーーーン!!!   

私は立派なトマトドロボーだったのです。


それから十数年の月日が流れて…⏰
とある集まりで、重富出身のヨカニセに出会いました。

懐かしくて、つい疎開先の話をしましたところ、ヨカニセいわく

「ソン農家ハ オイゲェジャッガネー!」  訳:その農家は、俺の家だよ!

なんと❗彼はナカ婆のお孫さんだったのです。

そして恐る恐るトマトのことを告白をいたしました…すると

「ヨカヨカッ! 
  ヤサシカァ婆サンジャッタカラ ガランカッタトヨ。当時ハ皆 飢エチョッタカラネー。」
   訳:いいよいいよ! 優しい婆さんだったら、叱らなかったんだよ。当時はみんな、飢えていたから。

彼もお婆さん譲りのヤサシカァヨカニセドンでした。

すでにナカ婆さんは亡くなられていて
せめてもの懺悔と感謝の気持ちをこめて、彼にショツ🍶(焼酎)を送らせて頂きました…
が…
ショツで私の罪が晴れるわけもなく、毎年トマト🍅が実るこの季節になると
ナカ婆にそっと手を合わせています。合掌🙏

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ショツは、鹿児島弁で焼酎のこと。薩摩の吞んべいは、芋焼酎が大好きです。🍶




人気ブログランキングとブログ村に参加しています。
気が向かれましたら、下のバナーをポチッとクリック、シッタモンセ。😉


80歳以上ランキング

にほんブログ村 地域生活(街) 九州ブログ 鹿児島県情報へ
にほんブログ村

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 いつも、ちょっとブラックなオチに、にやっとしていましたが、今回は不覚にも(?)ホロッとさせられました。戦時中のお話しは、なかなか聴くことが出来なくなってきました。どうしても暗くなってしまうかとは思いますが、是非、残していって下さい。

婆ダムA子 さんのコメント...

匿名様

いつもブログを読んで頂き、とても嬉しいです!
ブログを続けていく励みになります。
アイガトモウシアゲモシタ。コイカラモ、応援シッタモンセ。
訳: 心よりお礼申し上げます。これからも応援してください。 

婆ダムA子